香川県さぬき市多和助光東30-1(旧 多和小学校)
[イベント] スケジュール:2025/10/25
更新日:2025/09/26
2025年10月25日に「第3回 宇宙落語会 in うどん県と観望会」が天体望遠鏡博物館を会場にして開催されます。一般社団法人天体望遠鏡博物館は本イベントの開催会場として協力しています。
日時:2025年10月25日(土)15時00分~20時00分(受付開始・開場14時30分)
会場:天体望遠鏡博物館 さぬき市多和助光東30-1
会費:無料
参加方法:事前参加予約は不要です。当日14時30分から現地にて受付致します。お席は100名分ほど用意しています。多数になった場合は立ち見になる場合がございます。
駐車場:40台駐車可。40台を超える場合は隣接する臨時駐車場をご利用下さい。臨時駐車場が満車になった場合は入場をお断りする場合がございます。
夕食:ご希望の方には500円でお弁当の予約を承っています。予約は宇宙落語会のホームページから行えます。軽食などの持参は自由です。
【当日の予定プログラム】
14:30 開場・受付開始
15:00 開演・大山市長ご挨拶
15:10 落語 桂福丸
16:00 中入り
16:10 ミニ講演「私が宇宙に魅せられた訳」柴田一成
16:35 トークショー 柴田一成・村山昇作・桂福丸
17:00 館内見学および夕食*1
18:00 天体望遠鏡博物館の様々な望遠鏡を使った天体観望会*2
20:00 閉会*3
*1 夕食について
夕食用のお弁当(500円)を予約で承ります。
お弁当の予約は宇宙落語会のホームページからお申し込み下さい。
*2 雨天時は屋外での望遠鏡による観望会は中止します。代わりに屋内イベント(プラネタリウム投映・館内特別ツアーなど)を行います。
*3 曇天・雨天時の場合は閉会時刻が20時よりも早まります。
【出演者】
柴田一成 宇宙物理学者・理学博士、京都大学名誉教授
村山昇作 一般社団法人天体望遠鏡博物館 代表理事
桂福丸 落語家、京都大学法学部OB
創作宇宙落語にトークショーと,楽しい今夜の最後を飾る天体観望会。この夜は,地元の皆さんもたくさん参加されているはず。顔見知り同士の和やかさも感じられそうです。そんな,いつもの天体観望会とはまた少し違った雰囲気があるかもしれませんが,『天体望遠鏡で星を見て,宇宙を感じる一夜』という点では,変わることのない味わい深い観望会にしたいと思います。
それでは,10月25日夜,どんな天体が観察できそうなのか,予行演習を開催することにしましょう。
最初に,18時より20分ほどオリエンテーションが行われます。ここで,当夜観察可能な天体や望遠鏡の覗き方について,解説があります。その後,実際に天体望遠鏡を用いての観望会スタートとなります。
宇宙(星,天体)を見る場合,一つは機材(天体望遠鏡や双眼鏡)を使っての観察という手法がありますが,もう一つ,忘れちゃいけない専用の品,それは『肉眼』です。
まずは,ご自分の目で空を見上げてみましょう。星空を見る場合,特に星々の並びである星座を見つける場合,ポイントとなるのが,明るい星を見つけることです。
体を南に向けて,視線を上げていきましょう。
すると,下のイラストのような感じで,明るい星がいくつか見えていると思います。
天頂から右(西)寄りには,ベガ,アルタイル,デネブの3つの一等星が作る夏の大三角が見えています。もう秋分も過ぎて,暦の上では秋真っ盛りなのに,夜空にはまだ夏の星空が見えているんですね。
そして,南から左(東)寄りの空には,土星と秋空で唯一の一等星であるみなみのうお座のフォーマルハウトが見えていると思います。
これら夏から秋の明るい一等星たちと土星を,まずは肉眼で確認しておきましょう。
この中では,土星が気になるでしょうか。太陽系第6番目となる土星は,これからが見頃となります。
土星は,環(輪っか)があることで有名な惑星です。大きさは地球の9.5倍。平均密度は水よりも小さいため,もし仮に水の入った(超巨大な)容器に土星を入れると,プッカリと浮かんでしまうと例えられます。
距離は13億km。あまりピンと来ませんね。探査機で行くと4~7年ほどかかります。お客さんを乗せてジャンボジェット機で行こうとすると140年ほどかかります。まだ,イメージできにくいですね。それでは,土星の大きさを,(おおよそですが)スーパー店先でよく見かける今が旬の柿に例えてみると,地球はパチンコ玉ほど。その柿の大きさの土星が,パチンコ玉大の地球から1.8kmほど離れたところを回っていることになります。何となく距離感をイメージできそうでしょうか。想像すると,けっこう離れるんだという感じがしませんか?
その土星ですが,図鑑なんかでは見事な環がぐるりと一周した,まるで目玉のような写真が掲載されていたりします。実は,今頃の土星はこの環が見えないんです。つまり,〇だけの土星。
どういうことかというと,土星本体の直径約120,000kmに対して,環の厚みは数m~数百m。先ほどの柿で例えて土星本体を柿とすると,環の厚みはウィルス以下になります。そんな薄い環を,10~11月はほぼ真横から見ることになります。そりゃ見えないレベルですよね。なので,今はほぼ〇の土星なんです。環の消失とよばれていますが,それはそれで珍しい現象ではあります。
ただ,大きな望遠鏡では,まだ何とか,串が刺さった団子のごとく,細く細くギリ見える可能性はあります。ぜひ,確かめてみてください。
さて,土星を観察したところで,星空全体を見渡してみましょう。
まずは,南方面の星空です。
この半球図は,当夜19時半頃の南の空を示しています。
土星の右(西側)下に,みなみのうお座のフォーマルハウトが,首をぐっと上に向けると,天頂(真上)から少し左(東)に秋の星座であるペガススの四辺形が見つかるかと思います。この四辺形は,だいたい正方形に近いものですが,2~3等星と,それほど明るくない恒星からなるため,じっくりと探さないと見つけにくいかもわかりません。
続いて,北方面の星空です。
博物館の建物(校舎)の右上あたりに,カシオペヤ座が見えているはずです。『W』の形をしていて,北極星を見つけるために使われることでも有名な星座です。当夜は縦に見えていて,数字の『3』っぽく見えるかもしれません。秋の星座の代表格です。ぜひ見つけてみてください。
カシオペヤ座を見つけたら,北極星を探してみてください。北極星までのファインディングチャートは下図の通りです。
秋の星空は,一等星が一つだけ,見つけやすい星座もカシオペヤ座くらいと,全体に寂しい印象があるといわれます。
ところが,そんな地味な秋の星空には,一つの神話物語が展開されているのです。そのお話を紹介しておきましょう。タイトルは,エチオピア王家の物語です。
古代エチオピアにアンドロメダという名の姫がいました。
アンドロメダは,エチオピアの国王のケフェウスと,その妃であるカシオペヤの間に生まれた美しい王女で,その美しさゆえ,母親のカシオペヤは娘の自慢ばかりをしていました。そして,『海の妖精であろうとアンドロメダの美しさにはかなわないだろう』と口をすべらせたことで,海神ポセイドンの怒りをかってしまいます。
怒ったポセイドンは巨大な化けくじらをエチオピアの海岸に差し向けました。
くじらといっても,ただ大きいだけのくじらではありません。恐ろしいつめの生えた手が2本,鋭い牙が生え並んだ口,その口から海水を吐くだけで大津波が起こるという怪物です。
化けくじらが起こす大津波に苦しむ民衆に,頭をかかえた国王ケフェウスが神様に相談にいくと,それはカシオペヤの自慢話が原因であることがわかりました。そして海神ポセイドンの怒りを抑えるには,王女アンドロメダをお化けくじらの生け贄にささげるしかないと告げられたのです。
もちろん,王はかわいい娘を差し出すことはできません。かといって,化けくじらをそのままにしておくこともできません。親として娘を守るか,王として国を守るか,究極の選択を迫られます。しかし,その話を知った国民が有無を言わさず,アンドロメダ姫をさらって,両手に鎖をかけて岩に縛り付けてしまったのです。
やがて,岩にくくりつけられたアンドロメダ姫を見つけて,化けくじらがやってきました。そして,アンドロメダ姫に対して大きな口をあけて襲いかかる化けクジラ。アンドロメダ姫が恐怖のあまり気を失いかけたそのときです。白い天馬(ペガスス)に乗った一人の若者が大空から舞い降りてきました。
勇者ペルセウスです。
ペルセウスは袋からメドゥーサの首を取り出し,化けくじらにその顔を向けました。なにしろ顔を見たものは全て石になってしまうというメドゥーサの首ですから,化けくじらといえどもひとたまりもありません。あっさりと石になってしまい,海中深く沈んでいきました。
ペルセウスは,アンドロメダ姫に一目惚れし結婚を申し込みます。また,ケフェウス王もペルセウスの勇敢な姿にすっかりほれこんでしまって,娘との結婚を承諾しました。
と,こんなお話です。この話に出てくるケフェウス,くじら,ペルセウス,アンドロメダ,カシオペヤ,ペガススが,全て星座として出揃っているのが秋の星空の特徴の一つです。単純なストーリーではありますが,星空を舞台に繰り広げられる物語,とても壮大に感じませんか?
星座物語に登場する一つ一つの星座を探しながら,物語が展開する星空の世界を味わってみてください。
最後に,当夜,見応えのある天体をいくつか紹介しておきましょう。
当夜は,夏の天体も見えていますので,秋の天体と一緒に説明します。
天の川
観望会で『天の川が見えてますよ』と案内すると,『えっ~』『どこ?』といった,驚きに近い声が聞こえることが数多くあります。『天の川を見たことがある人は?』と尋ねてみると,ほとんどの人が見たことがないとの返事を返してくれます。天体望遠鏡博物館のある多和の空では,(晴れていて雲がなければ)この天の川を見ることができます。天の川が見えるということは,それだけ空が暗く,天体の観察に適している場所といえるんです。
この時期では,(夏の大三角をつくる)ベガとアルタイルの間付近から,南西方向に,淡く,薄い煙のように伸びているのがわかるかと思います。天の川は「肉眼」で見えます。双眼鏡や望遠鏡を使うと天の川が星の集まりだということがわかります。
アルビレオ(はくちょう座の二重星)
アルビレオは,はくちょう座の口ばしに位置していて,黄色っぽい主星と青っぽい伴星の色の対比が見事な二重星。二重星とは,肉眼では1個の星にしか見えないものが,望遠鏡で観察すると接近した二つ(以上)の星として見える天体をいいます。
アルビレオは,『北天の宝石』ともいわれます。その美しさのため,宮沢賢治は『銀河鉄道の夜』の中で,この2つの星を輪になって回るサファイアとトパーズとなぞらえています。
見る人によっては,青色と黄色,青緑と橙色,水色と金色等々,捉え方が違うようです。さて,あなたは何色のペアに見えますか?
ペルセウス座二重星団(h&χ)
カシオペヤ座のW形の近くにある見事な散開星団。散開星団とは,ほぼ同時期に誕生した星々が,比較的近い領域に集まってる天体をいいます。この星団は双眼鏡でもよく見える天体です。倍率は低めの方が隣接する2つの星団の全体像が見渡せることもあり,見た印象は良い感じがします。小さ目の望遠鏡を使って低倍率での観察がオススメです。
M31(アンドロメダ銀河)
アンドロメダ座にある系外星雲。系外星雲とは,太陽系のある天の川銀河(銀河系)の外にある銀河をいいます。このM31は肉眼で見える最も遠い天体です。こちらも,倍率は低めの方が全体像がわかりやすいといえます。渦巻きには見えませんが,見かけの大きさは満月の約5倍ほどもあるビッグな天体です。
M15(ペガスス座の球状星団)
ペガススの頭の少し先に,大きな球状星団があります。球状星団とは,恒星が互いの重力の作用でボール状に集まった天体のことをいいます。
M15を大きめの望遠鏡を使って高倍率で観察すると,一つ一つの恒星がブツブツした感じで見えてきます。どの星も120億歳と高齢の星ばかりで,その数は十万個を超えると言われています。
当夜は,博物館の担当者が様々な天体を望遠鏡を使って導入,そして紹介してくれると思います。望遠鏡を覗きながら,それがどんな天体なのかぜひ質問してみてください。星は観察するだけでなく,その天体がどんな天体であるかを知ることによって,より興味深く感じることができるようになるものです。
また,大きな望遠鏡と小さな望遠鏡とでは見え方が大きく違ったりします。レンズを使った屈折望遠鏡と鏡を使った反射望遠鏡とでも,見え方に違いがある場合があります。倍率の違いによる見え方の違いもあります。同じ天体でも,いろいろな望遠鏡,いろいろな倍率で観察して,見え方の違いを味わってみるのもおもしろいと思います。
秋も深まりつつある静かな夜,虫の声に耳を澄ませながら,いろいろな天体の観望をじっくりとお楽しみください。
<注>
天体(星雲星団)の名称の頭に付く『M』記号について
フランスの天文学者シャルル・メシエは,数多くの星雲星団を観測してカタログにまとめました。そのカタログに記された110個の天体には個々にM番号が振られて一覧化され,観測に活用されています。『M』は観測者メシエのM。