香川県さぬき市多和助光東30-1(旧 多和小学校)
この望遠鏡は2016年9月23日、愛知県豊橋市の神戸(かんべ)様から寄贈されました。
地人書館発行天文と気象別冊「天体望遠鏡のすべて」1975年版のメーカーが推奨する名機として掲載されている機種です。
光学的性能
有効口径:80㎜ 焦点距離:1200㎜ 2枚玉 アクロマート ハードコーティング 集光力131倍 分解能1.43″ 極限等級11.3等
ファインダー:口径30㎜ 倍率9倍
架台
無伸縮三脚付きドイツ型赤道儀 赤経赤緯全周微動 赤経赤緯目盛環 緯度目盛付き 水準器
重量:27㎏(オリジナルの場合) 価格:195,000円(1975年の参考価格)本機は1973年に購入
輸送中の対物レンズへの衝撃を防ぐため、レンズは厳重に梱包されていました。梱包を解いていくと、美しいレンズが現れました。
レンズを詳細に点検したところ、わずかに汚れが認められましたので、組み立て前に精製水で拭き取りを行いました。クリーナーを使うことなくきれいに取り取ることができました。
引きネジ、押しネジがありますので、3本の引きネジの回転数を合わせることで簡易的な光軸出しを行いました。本格的な光軸調整は後日にしました。
接眼部と鏡筒外装を界面活性剤溶液で拭き取り。
鏡筒の製造番号 T1543
フードは3点ネジ止め、フードキャップは太陽観測用口径絞りフタがついています。この絞りフタは一般的な押し込みタイプではなく、ネジきりされているタイプです。
ドロチューブには1㎜単位の目盛りが刻印されています。このあたりの作りが高級機であることを感じさせます。
ラック&ピニオンの4本止めで2本のイモネジでテンションを調整できるようになっています
寄贈者様のオーダーでステンレス丸棒から削り出しだして作ったオリジナルの接眼部キャップです。
ファインダーは口径30㎜、倍率9倍です。鏡筒との固定は1本足、光軸調整は前後3本の調整ネジタイプです。調整ネジのアタマが大きいことがわかります。ファインダー内には北極星視準サークルがあり、極軸合わせをしやすくできるようになっています。
鏡筒バンドは鏡筒を支えるのに充分な幅が確保できています。2本の締め付けネジでとめるタイプです。トップ部分にみえる小さなネジはカメラ雲台取り付けネジです。
赤道儀の製造番号は M1512 表面の模様から鋳物であることがわかります。
ドイツ式赤道儀 赤経・赤緯ともにウオームとウォームホイールによる全周微動。
赤緯目盛りは2度刻み、赤経目盛りは10分刻みになっています。望遠鏡を西側回転させると目盛り指示が少なくなるようにできていますので時角目盛りではなく赤経目盛りになっていると判断できます。
赤緯クランプ。鋳物で作られたオリジナルパーツであることがわかります。しっかりと留めることができる大型のクランプネジです。赤経クランプも同じものです。
緯度調整はターンバックル方式です。このタイプは動かせる範囲が小さくなりますが、極軸調整を微調整しやすいと言えます。赤道付近の低緯度地域で使用するときはターンバックルを取り替えるようになっていたようです。
三脚固定後に東西方向の調整がしやすいように水平回転できる構造になっています。その回転をとめるためのクランプ(方向修正クランプ)もついています。
三脚の締め付けネジも、鋳物でネジアタマが大きく、締め付けしやすい形状です。
水準器付きです。まだ実用できる状態を保っています。
オリジナルのウェイトシャフトは鉄製ネジタイプですが、本機は寄贈者様により、ステンレス製ネジ止めタイプに換装されています。ステンレス製ですので、錆が出ることがなく、美しさを長く保てます。このステンレス製シャフトは寄贈者様による特注品です。
三脚開き止めは鉄板3本を中央でネジ止めするタイプです。載物台はプラスチック製です。割れずに残っている物は稀少です。
三脚の石突きは鉄カバー付きです。
寄贈者の神戸様(かんべ)が天文に興味をもつようになったのは10歳のころ父から五藤光学4cm屈折の組み立てキットを買ってもらったのが始まりだそうです。本機は成人してから1973年に入手されました。主に星雲・星団を観望するためでしたが、NIKONの双眼鏡7x50SP、10X70SP、更に18X70WFを手に入れてからは、本機の出番が少なくなり、室内オブジェになっていたそうです。さらに2015年10月にタカハシのFC100DL、GTL125/1200APOを購入したためなおさら出番が少なくなったそうです。しかしながら本機は五藤光学を代表する屈折望遠鏡であり、「家でくすぶっているより仲間の望遠鏡と一緒にいるほうが幸せかな」との思いで寄贈されました。
2016年11月5日ご夫妻でご来館され、本機と再会されました。
11月5日ご来館時にお持ち下さいました。
ケルナー40㎜です。ドロチューブにねじ込むタイプです。
SUNフィルターですが、よくあるアイピースのドロチューブ側にねじ込むタイプではなく、HM-25㎜アイピースの覗き口にかぶせてねじ込むようになっています。このタイプのほうが熱でSUNフィルターが割れる恐れは少ないと思われます。
オリジナルのファインダーよりもこちらの方が広視野で見やすいでしょうということで寄贈下さいました。ウィリアムオプティック製で暗視野照明付きです。マルチコートです。
星図の寄贈