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五藤光学研究所15㎝屈折赤道儀(和歌山市立少年自然の家)

ブランド: 五藤光学研究所
光学系: 屈折
口径: 150mm
焦点距離: 2250mm
架台形式: 赤道儀
年代: 1960年前後以降1980年前後
備考: 和歌山市立少年自然の家

この望遠鏡は和歌山市立少年自然の家の屋上ドーム内にあった五藤光学研究所製の15㎝屈折赤道儀です。

和歌山組立2_006

*レンズセルには有効口径152㎜と刻印されています

和歌山組立2_007

品名 15㎝(6in)据付型赤道儀/製品番号1120/製造番号210/製造年月日昭和49年3月(1974年)


移設の記録

2016年6月28日当館のホームページ問い合わせに、和歌山少年自然の家のご担当者様から、屋上ドーム内の五藤光学研究所製15㎝屈折赤道儀を寄贈検討している旨の連絡がありました。施設が老朽化し、建て替えのため9月から取り壊す予定とのことです。しかし15㎝屈折望遠鏡は、整備すればまだ使える状態であり、廃棄するのはもったいないので天体望遠鏡博物館での活用を考えてほしいとのことでした。

施設の取り壊し予定が9月からですので、8月末までには移設を完了させなくてはなりません。まず施設の見取り図や現況写真をご担当者からいただきました。
五藤15㎝屈赤は分解すれば、人力でも階段を使って下ろすことができますが、図面、現況写真をみたところ、3階まで螺旋階段になっていました。螺旋階段の幅は赤道儀を運ぶときに壁にあたることが予測でき、人力で赤道儀を下ろす作業は安全確保ができないと判断しました。

そうなるとクレーンしか方法がありません。ところが施設は、小高い丘の山頂にあり、進入路は幅2.5メートルほどの山道です。またドームは3階部分にあり、かつ手前に2階建ての建物があります。こうなると、どのようなクレーンを手配すればよいか我々には判断がつきません。そこで、これまでも大型望遠鏡の移設に協力してもらっているハウスサービスの長町さんに依頼して、和歌山市のクレーン業者さんに現地調査してもらうことになりました。その結果、施設まで進入して作業できるクレーン車が確保できました。

続いてこちらの移設スタッフの確保です。和歌山市での作業ですから2つのチーム編成にしました。ひとつは輸送を担う香川班です。2つめは、現地集合して分解作業する関西方面班です。

いよいよ8月21日移設作業実行です。

和歌山五藤15㎝輸送(2)_001 和歌山五藤15㎝輸送(1)_001
午前8時出港の徳島港→和歌山港のフェリーです。フェリー代金を節約するため、乗用車は徳島港に駐車させ、トラツク1台と4名で乗船しました。関西班は滋賀、京都、兵庫から高速道路で和歌山市に移動です。出港して2時間後、和歌山市立少年自然の家がある加太が見えてきました。

和歌山五藤15㎝輸送(1)_002
和歌山港に予定通り10時すぎに到着しました。港には関西会員班が出迎えにきてくれています。

和歌山五藤15㎝輸送(1)_003 和歌山五藤15㎝輸送(1)_026
11時ころ、目的の和歌山市立少年自然の家に到着です。途中、道路幅の狭い箇所があったり、路上駐車している車がいたりしたのでクレーン車が、到着できるか心配になりました。施設の外観です。3階の屋上にドームが見えます。

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ドームスリットから外にでることができます。ドームからの眺めはすばらしい景色です。

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海辺の施設のため塩害による腐食が心配でしたが、外装は良い状態を保っていました。歴代のご担当者が保護袋を使って大切に守ってきたからだと思います。

和歌山五藤15㎝輸送(1)_008
まずはアイピースなどの小物類を箱に詰めて、1階に運び出します。こういう小物は最初に運び出しておいた方が運び忘れを防げます。

和歌山五藤15㎝輸送(1)_011 和歌山五藤15㎝輸送(1)_016
ファインダー、サブスコープ、鏡筒のカウンターウエィトなどを取り外して、1階に下ろしていきます。バランスウェイトを鏡筒側の部品取り外しに合わせて、外していきます。この作業を怠ると、急な回転が起こったりして危険です。

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五藤15㎝鏡筒は対物側と接眼側に2分割できます。しかし、接眼側はクランプレバーや微動レバーがあり取り外しに時間がかかりますので、対物側だけを取り外します。固定ボルトを取り外して、対物側を下にすると取り外しが楽になります。

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外した対物側鏡筒は人力で1階に下ろします。接眼側鏡筒を下にして、バランスウェイトを調整します。

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午後からのクレーン作業のときに損傷しないようにモータードライブシャフトを外しておきます。取り外したバランスウェイトなどを1階に下ろします。

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午前中の作業はここまでにして、昼食にしました。

和歌山五藤15㎝輸送(2)_004和歌山五藤15㎝輸送(2)_005
12時30分クレーン車が到着しました。

 

和歌山五藤15㎝輸送(2)_007
ここからはドーム内の班と、クレーンで下ろした望遠鏡をトラックに積み込む班に分かれて作業です。

和歌山五藤15㎝輸送(1)_031
赤道儀と鏡筒接眼部をクレーンでつり上げます。ドームスリットが天頂まで開放できていないため少し、斜めに力ががかかります。それを補正するためロープで調整します。

和歌山五藤15㎝輸送(1)_033
スリットにぶつからないように慎重につり上げていきます。

和歌山五藤15㎝輸送(2)_008
ドームスリットから出せました。

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トラックの荷台にむけて下ろしていきます。

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クランプレバーや微動リバー、モータードライブなど大きな荷重がかかると変形、損傷する箇所するに気をつけながら、ゆっくりと下ろします。

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続いてポール脚部のつり上げです。できるだけまっすぐ上がるようにバンドの長さ調整をしておき、さらにロープでブレを防ぎます。

和歌山五藤15㎝輸送(1)_039 和歌山五藤15㎝輸送(1)_040
ポール脚部がつり上げられていきます。最後に脚部ベースをつり上げます。

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脚部ベースを積み込み、輸送中に荷崩れがないように結束していきます。

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14時8分。積み込み作業を終え、施設のご担当者様といっしょに記念撮影。ご担当者様は本来、日曜日はお休みなのですが、この作業のために快くおつきあい下さいました。ありがとうございました。

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香川班は16時25分発 和歌山港→徳島港のフェリーに乗船。フェリー内の写真です。日曜日でしたのでトラックは我々の1台のみでした。

和歌山五藤15㎝輸送(1)_046
天体望遠鏡博物館には8時すぎに到着。この日は荷下ろしまでで終わりにしました。
無傷で輸送できて一安心です。


9月10日日曜日 大型望遠鏡展示棟での再組み立てを開始しました。

和歌山五藤15㎜組立_010 和歌山五藤15㎜組立_011
脚部ベースを仮置きします。脚部ポールをベースに連結します。周りの望遠鏡と干渉しないか確認してアンカーの穴開け位置を決めます。

和歌山五藤15㎜組立_012 和歌山五藤15㎜組立_001
脚部ベースのアンカーボルト通し穴に油性マジックを差し込み、コンクリートの床にアンカー位置を書きます。写真はアンカー位置を床面に書き込んだところです。3つの小さな円が見えます。メカニカルアンカーを打ち込むための穴開けをしています。

和歌山五藤15㎜組立_013 和歌山五藤15㎜組立_002
粉塵が舞い上がらないように掃除機も使用します。ドリルで開けた穴に溜まっているコンクリート粉を専用のエアーブローと掃除機を使って取り出します。この作業をおろそかにすると、正しい長さでの穴開けができません。

和歌山五藤15㎜組立_003 和歌山五藤15㎜組立_004
メカニカルアンカーを打ち込みます。アンカー位置に脚部を設置します。

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メカニカルアンカーにボルトをいれ締め込みます。赤道儀を搬入。

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手動クレーンで赤道儀をつり上げていきます。

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ボルト位置を確認しながら赤道儀を脚部に挿入していきます。

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赤道儀を固定できました。この日は日没後、一般公開の天体観望会があり、その準備を行うために作業はここまでにしました。


後日、鏡筒部も組み立てしました。

和歌山組立2_010

有効口径152㎜ 焦点距離2250㎜ №205 GOTO JAPANの刻印
レンズにはヤケもしくはコーテイングはがれがあらわれていますがメンテナンスすれば実用には充分な状態にできると思われます。

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サブスコープ 有効口径80㎜ 焦点距離1200㎜ №190 こちらもレンズにはヤケもしくはコーテイングはがれがあらわれています。

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